木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 

自らの信念に従う

 「現実をしっかり受け入れ、前向きに一歩を踏み出すことで、人生は好転していくことを今回の体験(東日本大震災)を通して学びました」という力強い言葉で講演は終了いたしました。

 先日、福岡ひびき信用金庫主催の経営大学で、講師である共同印刷(株)鈴木充男社長が最後に結ばれた言葉です。その言葉に勇気と力をいただき社長としての器の大きさを感じた経営者は、私一人ではなかったと思います。

 共同印刷(株)を昭和六十一年創業し、年々業績も向上していきましたが、バブル崩壊後業績悪化。しかし、全社員一丸となって業務の改善に取り組み、経営危機を脱しました。その時体験したことが、「全社一丸となれば、奇跡が起こる」ということだったそうです。そして再び業績が上向きはじめました。そうした矢先今度は、先の東日本大震災に見舞われました。会社が福島第一原子力発電所からわずか三・五キロの所にあったため、当然のように警戒区域となり、会社ごと避難を余儀なくされました。

 社員は、全員無事であったものの避難のためバラバラになり、もう立ち直れないと一時は廃業も考えられたそうです。そんな中、これまで取引のあったお客様からの励げましや、残った社員(半数は退職)たちからの「早く再開しましょう」という声に勇気をいただき震災半年後、再開にこぎつけたそうです。これまでの仕事がお客様から高い評価をうけていたのでしょう。さらに社長に対する社員の厚い信頼があったのだと思います。

 原発のある大熊町から郡山市への引っ越しも大変だったにもかかわらず、全社員一丸となって乗り越えられたそうです。再会に向け、鈴木社長は強い意志を持ち、これ以上の困難はないと思われる困難に勇気を持って立ち向かわれました。

 再開後、これまでに受けた恩を返すべくさらに努力されています。例えば若者の就職先が地元に少ない中、毎年新卒者を採用され、若者の流出をとめる努力もされています。そうしたことで地域貢献される一方、会社を印刷学校として活用していくことで、同業他社の後継者の育成にも尽力したいと述べられています。志高く生きておられます。

 高村光太郎の詩である

 「いくら廻しても針は天極を指す」

 を引用され、どんな困難に合っても自らの信念に従いブレることなく進んでいくという不撓不屈の精神を披露され、大いに感銘を受けました。

 
 

2014年10月 第285号より

芳野 栄

 
戻る