木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 

徳育のひとコマ

 近くの中学校で「社会人講話」と題して、生徒達への正しい職業観や社会観を育てることを目的とした授業の講師をつとめさせていただきました。はじめにパン屋という職業や店づくりで大切にしていることを話したあと、社会人として大切なことは、周囲の人に対する思いやりですということをお話いたしました。

 例にとって話をしたのは、現在学校で問題になっている“いじめ”の問題について思うところを述べました。その授業のひとコマを述べてみますと、

「みなさん達、中学生の間で問題になっていることと言えば何ですか」の質問に一人の生徒が手をあげて、「“いじめ”です」と答えてくれました。「では、“いじめ”はどうして起こるのでしょうか」の問に沈黙。そこで「皆さんは“思いやり”という言葉を知っていますか。知っている人、手をあげて下さい」の問に全員手をあげる。「では、“思いやり”が大切だと思う人は手をあげて下さい」というと、これまた全員挙手。「では、“思いやり”とは何ですか」の問に一人の生徒が「相手の立場に立って考えてあげることです」と答えます。「そうですね。でもそれでは充分ではありませんね。例えば、先生に対する“思いやり”とは、先生の立場に立って考えてあげることになりますね」「・・・・・」「皆さんは、先生になったことがないのに、先生の立場というのがわかりますか?」「・・・・・」「では、思いやりを次のように考えてみてはどうでしょう」「“思いやり”とは、相手に不快さを与えないこと。さらには、安心や喜びを与えることと」「ですから先生に対する“思いやり”とは、先生に不快さを与えないこと。先生に安心や喜びを与えることとなります」「これだとうまくいきますね。どうですか?」(数名の中学生が首をたてに振る)「友達に対する“思いやり”も同じです」「友達がイヤだなと思うことはしない。友達が安心したり喜んだりすることをすすんでする。これが“思いやり”です。」「ここまで理解できた人、手をあげて下さい」(全員挙手)「では、“いじめ”はどうでしょう。友達をいじめることで、その友達にイヤな思いをさせていないでしょうか?安心を与えていますか?喜びを与えていますか?どうでしょう」(数人が首を横に振る)「そうです。“いじめ”は“思いやり”とは正反対の行為ですね」「皆さんは、さきほど全員“思いやり”の大切さをよく理解されていました。ですから、友達にイヤな思いをさせない。安心を与えたり、喜びを与える心づかいを、皆さん一人ひとりがしっかりできるようになることが、“いじめ”をなくすためには最も大切なことです。」「では、“思いやり”の心をどのようにして身につけていけばいいのでしょう」「ここに10項目の思いやりの行動を書いてきました。これらが、しっかり身につき、習慣化できるまで取り組んでみましょう。相手を不快にさせない、安心や喜びを与える心づかいができるようになります。」

 一、笑顔であいさつ 二、正しくやさしい言葉づかい 三、「ハイ」という明るい返事 四、身のまわりの整理、整頓 五、約束・規則は必ず守る 六、水や電気の節約 七、食事の前は「いただきます」と手を合わせる 八、脱いだハキモノはきちんとそろえる 九、ものごとの好き嫌いはつつしむ 十、ものごとの処理は機敏に(本来は二十一項目ある)

 「このような行動に取り組み、思いやりの心を身につけて下さい。そして、まわりの友達をいじめるようなことは、決してしないで下さい」「最後に、きょうの私の話を聞いて、“いじめ”は絶対にしないと私に約束できる人、手をあげて下さい」(全員手をあげる)「約束ですよ。ありがとうございます。それでは、きょうの授業を終わります」その後、号令により全員起立したあと、先声後礼のきちんとしたあいさつをいただきました。すがすがしい雰囲気が満ちていました。

 

2014年1月 第276号より

芳野 栄

 
戻る