木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 

継続は克己なり

 

 “継続は力なり”という言葉があります。一つのことを継続することで、大きな力が生まれるということだと思いますが、そうは言っても一つのことを継続することはとてもむずかしいことです。

 私が一つのことを継続できるようになったきっかけは、息子が大学に通っていた四年間、帰省している時をのぞいて、毎日息子へ一枚のハガキを書き続けたことです。お店のことや家族のこと、世の中のできごとに対する私の考え方などを書き続けました。その枚数は、四年間でちょうど千枚に達しました。その時、「自分もやればできる」という自信が心にわいてきたのを覚えています。その時期と並行して書き続けていたのが、この“木々のささやき”です。上のような内容で書き続け、本号で二六七号となりました。創業以来書き続けていますが、当初は不定期に、そして平成六年より毎月一回書き続けるようになりました。十九年間近く続いたことになります。

 継続できている秘訣は何だろうと考えてみますと、まず自分の心を強くしたいという思いがあったように思います。それまでは何をやっても続かない。そこには気まぐれな心、弱い心があったように思います。経営を行う中で、自分の心を本気になって鍛え強くしないと何も成就できないという危機感を感じていました。息子へのハガキは毎日です。一人の人に毎日書き続けるのは、きびしいものがあります。日々書くための話題や感動を求め、日々自分自身を変化させ続け、その時の思いを書くようにしました。ときに、つらい日々もありましたが継続することで、感性のアンテナが磨かれ継続するにしたがって、書くことの苦痛から少しずつ解放されていったように思います。継続できている秘訣の二番目は、継続することの大切さを真に理解できたこと、つまり“継続は力なり”という言葉の意味が理解できたことです。理解すると、何事も継続しないわけにはいかなくなります。そして三番目は、継続している中「ここでやめてしまってはこれまでの努力が無駄になってしまう」とこれまでの自分の努力を無駄にしたくないと強く思ったことです。これまで継続してやってきたことは、中途半端などうでもいいようなものではない。真剣に取り組んできたはずだという思いがありました。以上のようなことで継続することについての抵抗がなくなり、一つのことを続けることができるようになりました。

 継続していると途中でいろいろな誘惑にかられます。その誘惑をはねかえす、誘惑に負けない心ができ上がるまで、一つのことを継続するのはむずかしいと思います。“継続は力なり”という結果の前に、“継続は克己なり”つまり自分の弱い心に克つことが求められると思います。また、“継続は本気さの証明”という言葉もあります。“本物は続く、続けると本物になる”という言葉もあります。これらは、いずれも継続することの大切さと同時に、継続できるか否かは、心にかかっているということだと思います。

 まず身近なやさしいことから「今日一日だけやる」の連続にチャレンジしてみませんか。

 

(PANメンバーズ東京例会の講演要旨より)

 

2013年4月 第267号より

芳野 栄

 
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