木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 

体験発表に学ぶ

 

 私の主宰しているあすなろ塾(パン屋さんのための人間学を学ぶ場)では、“体験発表”というものを取り入れています。与えられた課題について、内容をよく考え、行動目標を立て、日常生活や仕事の場で実践し、気づいたことや感じたことを二分間で発表するものです。

 この体験発表で多くのことを学ぶことができます。ある日の勉強会の体験発表でAさんは、「ハイ、という明るい返事をしよう」と題して、パートさんが自分に対して遠慮がちに声をかけてくるのを感じ、パートさんに呼ばれたり、頼まれごとをされた時は、「ハイ、よろこんで」という気持ちで明るく返事をするようにしました。するとパートさんから笑顔が返ってきたり、うれしい言葉を返していただけるようになり、私の方が喜びをいただくようになったと発表されました。一方、その体験発表を聴いた塾生からは、自分もときどき雑な返事をしているので、これからはその場を和ませるように「ハイ」と明るい返事をしますという感想や、私も同じように社員が私に対して声をかけづらかったこともあったように思います。これからは、常に明るい表情を心がけ、やさしい言葉づかいをすることで、話かけられやすい雰囲気をつくっていきますという感想。また、これまでは「ハイ」より「ハ〜イ」と言っていました。これからは意識して「ハイ」と明るい返事をしますと決意された方もいらっしゃいます。

 このように学びの中に体験発表を取り入れると、発表者は課題と真剣に向かいあうことで日頃の自分を振り返り、どこが自分に欠けているかに気づきます。そして、そこを正そうと具体的な行動をします。行動の結果欠けているところを正し、新たな気づきが生まれます。一方、体験発表を聴く人は、自分にも同じような欠けているところがあると気づき、新たな課題が見つかります。そして、体験発表された方の意見を参考に、自分の欠けているところを正そうと努力します。また、これまでに体験したことのないことや、全く気づかなかったことの発表を聴くことも多くあり、新しい学びとなります。素心学では、自己変革をはかることを大切にしています。つまり、自分の欠けていることろに気づいて、そこを正していくということですが、まさに“体験発表”は自己変革のためのすばらしい方法と言えます。自己変革のくり返しの中で人間的成長があるのでしょう。

 また、もう一つ“体験発表”のすばらしさがあります。それは、体験発表をすることで、自分の心の内を正しく表現できるようになるということです。特に、人の上に立とうとする人は、自分の思いや考えを簡潔に、わかりやすく相手に伝えることが求められていますが、体験発表をくり返し行うことでそれが可能となってきます。

 このように、“体験発表”にはたくさんの学びがあり、<“体験発表”は学びの宝庫>と言えそうです。

 
2013年1月 第264号より
芳野 栄
 
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