木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 
還暦を迎えて
 

 九月十七日で満六十才を迎えました。還暦です。家族や多くの方々から祝福され幸せいっぱいの還暦でした。

 還暦の日が近づくにつれて「感謝」という言葉が、頭いっぱいに広がり、いまここに生かされていることが、とてもありがたく感じられてなりません。昭和二十六年九月十七日、四十八才の父と四十五才の母の五番目の末っ子として、この世に生を受けました。私は双子の弟で母にしてみれば四十五才という高齢での出産は、とてもつらく、苦しいものがあったに違いありません。またその年から二人を分け隔てなく一生懸命育ててくれた父、母には本当に感謝せざるを得ません。これまでにもまして丁寧に、亡き父母に「父母恩重経」を唱え、父母の恩に深く感謝の気持ちを伝えました。私が今、ここにあること、そして幸せな人生を歩ませていただいていること、全ては父、母のおかげです。

 還暦の日が近づいたある日、ここまで私を育ててくれた方々で特に印象の深い人を思い起こしてみました。一番目は、もちろん父母でした。その次がやはり妻でした。「父母の恩重きこと天の極まりなきが如し」の言葉同様、「妻の恩重きこと天の極まりなきが如し」です。振り返ってみますと、私という人間が持てる力を最大限に発揮できるように全てをささげてくれ、応援してくれました。結婚後、私の提案や思いに対して「ノー」と言われた記憶がありません。全ては「はい」であったように思います。特に脱サラを決意した時やパン屋という職業を選んだ時、パン屋を九州という彼女の実家から遠く離れた地で始めようとした時、創業時五年間だけ手伝って欲しいと頼んだ時、全てが「はい」でした。(五年間がいつの間にか二十三年間にもなってしまいましたが……。)私の人生の転機に対してこれほどありがたく、かつ心強いことはありませんでした。それ以降も私が自分の能力を充分に発揮できるよう、辛抱強く黙々と環境づくりをしてくれたことが次々と思い出されてきます。ありがたいばかりです。いま、ここにあるのは妻のおかげであり、幸せでいられるのも妻の努力のおかげだと感謝しております。

 私には池田繁美先生という人生の師がいます。池田繁美先生からは素直な心の大切さを教えていただき、また池田繁美先生のおかげで、多くの方々とのご縁が結ばれていることも、私にとってありがたいことです。 また、私の人生の分岐点で、私にパン造りやその経営を指導していただいた師匠にも、感謝の気持ちを伝えなければなりません。その他ほんとうに多くの方々のおかげで、ここまでの人生を無事に歩んでくることができました。

 六十才といえば、人生の折り返しを大きく過ぎております。これからの人生は、これまでに恩を受けた方々への恩返しと、私に与えられた役割の実践に一日一日を真剣に命がけで生きていかなければならないと思っております。

 これまで育てていただいた皆々様に心より感謝申し上げます。ありがとうございます。

 
2011年10月 第249号より
芳野 栄
 
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