木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 
震災からのメッセージ
 
 今回の福島第一原子力発電所の事故で、「想定外」という言葉を多く耳にします。地震や津波が、「想定外」に大きかったので、原子力発電所の被害も、「想定外」のものとなったのでしょう。その結果、現在も「想定外」の被害で周辺地域の多くの方々が、苦しまれています。いつ終息するのか見えないまま不安な日々を過ごされています。

 私達人間が想定できることは、それほど大きなものでも、広い範囲のものでもないはずです。今回の地震や原子力発電所の事故で、私達が想定できる範囲は、せいぜいここ 二、三百年のことで、さらにそれに安全率を上乗せした範囲のものではないでしょうか。地球規模で発生することに関しては、想定することは、とてもむずかしいことがわかりました。目に見えない自然の力は、とても大きな力であって、想像を絶するものであろうと思われます。昨年夏の記録的な猛暑や今年冬の記録的な寒さがあったにもかかわらず今年の四月には、間違いなく桜の花が咲きました。自然のもつ力に驚きをかくせません。そのような自然の力の大きさを日頃の生活の中で感じたり、意識できない程、私達は技術の進歩や社会の発展に目を奪われ、自信過剰になり、謙虚さを失ってしまっているのではないでしょうか。

 「想定外」の事故を起こさせない為に、さらに補強し、安全性を高めることも大切だと思いますが、それには限界があり、再び「想定外」となりうることも否定できません。一方で、より確実な方法は、私達の現在の生活様式を少し改め、安心、安全な電力の供給範囲内でつつましく生活をおくることだと思います。「足るを知る」「多少の不便さはたのしみながら享受する」ということです。少し、自分自身を犠牲にし、「物が豊かな満足」から、「心が豊かな満足」に価値観を変えてみてはどうでしょう。

  私達は、これまで多くの便利さと快適さを手に入れてきました。しかし、そのことでさまざまな問題を引き起こし、それを次世代に残していこうとしています。次世代の人々が安心して安全にしかもたのしく生活を営むことができるよう、私達は今一度立ち止まり、“本来あるべき姿”を目ざすという方向に舵を切り直す時が来ているのかもしれません。

  被災され、今なお不自由と不安の中で生活されていらっしゃる皆様にはお気の毒ですが、今回の震災や原発の事故は、私達に対する何かのメッセージがあるように思えます。
 
2011年6月 第245号より
芳野 栄
 
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