木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 
一本の道
 
 自分の人生は、一本のまっすぐな道で貫かれていると気づくことがありました。

 私のこれまでを振り返ってみますと、中学・高校では体を鍛え、病気一つせず過ごせました。大学は工学部に入り、卒業後就職した会社では、材料の研究開発を皮きりに、工場での生産やその管理の仕事、建設現場での管理監督者としての仕事、さらに営業の仕事と多岐にわたり仕事をし多くの経験を積みました。最終的には、小さな事務所の責任者として経営に携わるような仕事をし、経営者になりたいとの思いで脱サラしました。パン屋の友達の「パン屋っていいんじゃない」のひと言でパン屋になることを決心。パンの修業先は、私より二年先に脱サラしてパン屋になった経験不足のパン屋。パンの造り方を学ぶというより、経営者として大切にすべきことを教わった二年間でした。このように、私の人生は、現在のパン屋からしてみると畑違いの道や曲がりくねったいくつにも別れた道のようでした。

 ところが、素直な心を学ぶという素心学に出会い、学びを進めていくうちに次第に自分の使命感について考えるようになりました。これからの人生、自分の良いところを生かしながら、パン業界のために何かしなくてはいけないのではないかと思うようになりました。自分の店の発展と同じように、周囲のお店のことや業界のことについても考え行動しなくてはいけないのではと思うようになりました。そうした中で、自分に与えられた使命というものを感じはじめ、自分の進むべき道も少しずつはっきりしてきたように思います。

  最近になって、自分の進むべき道がようやくわかりはじめ、過去からのことを一つひとつ振り返ってみた時に、目の前が明るく開けていくのを感じました。それは、過去いろいろ形を変えて歩んできた道と現在の自分が立っている位置、そしてこれから歩もうとしている道がしっかり一本でつながってきていることに驚きました。中学・高校でしっかり体を鍛えたこと、学校で学んだこと、会社に就職していろいろ経験を積んだこと、そして脱サラしたこと、さらに経験不足のパン屋で修業したことさえも全て、現在の私をつくり、これからの人生を歩んでいく上で私にとって「必要であり必然」だったのです。もちろん多くの人との出会いは、言うに及びません。人生に無駄な経験など一つもないと実感できました。

  自分の心を素直にしていくことで、自分の使命感に気づきはじめ、そのことで自分の人生には一本の道がしっかり用意されていることに気づいたのです。私にとって、これほどありがたいことはありません。これから先にも、いろいろなことが起こってくるに違いありません。私はそれらを、素直な心で「自分にとって、必要であり必然(起こるべくして起こった)のことである」と解釈し、受け入れていきたいと思います。これまでの過去の経験がそれを示してくれているのですから・・・。これからの人生を幅広く、充実させていきたいと思います。
 
2011年3月 第242号より
芳野 栄
 
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