木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 
夢の実現に向かって
 
  五月二十一日、元社員の今ア君がいよいよ店をオープンしました。益々の発展と夢の実現を祈るばかりです。

  開店の日とその翌日二日間にわたり、微力ながら製造の応援に行ってまいりました。私の開店当日が思い出され、今ア君のパンを造るすばらしい技術に感動しました。私の時とは比較にならないほどです。売上高も私の時の1.5〜2倍を記録し、順調なすべり出しに胸をなでおろしました。多量のパンを、まだまだ充分でない設備を駆使して作り上げていくところが、当時の私と全く違います。これからが本当に楽しみです。

  彼の工場にどっぷりつかった二日間の応援を経て、木輪に戻って再び仕事を始めると、心を満たすものが湧き上がってきました。「私はなんて幸せなんだ。」と実感できたのです。今ア君とほぼ同じような設備、人員でスタートしましたが、現在では機械設備をほぼ揃え、社員にも恵まれ、何心配することなく仕事ができているのです。とにかくありがたいのです。何よりの財産は、木輪総勢二十五名のスタッフだと実感できたのです。誠実で一生懸命努力し、かつ、やさしい心の持ち主ばかりです。開店の日の夕方、今ア君の店に、木輪の仕事を終えたあとのスタッフが一人、二人と自主的に集まり、最終的には社員のほぼ全員で彼の仕事の片付けを手伝ってくれたのです。その光景に胸が熱くなりました。

  機械設備は、売上げが上がるにしたがって、借金してでも買い揃えることができます。お金を出せば、それなりに能力の高い機械も手に入れることができます。それに比べ、スタッフはそのようにいきません。木輪のスタッフは、あまり無理しないようにとブレーキをかけなければいけないくらいに一生懸命仕事をし、自分の能力を伸ばし、可能性にチャレンジしながらやってくれています。何にも換え難い大きな財産と言えます。今ア君にも、是非このようになって欲しいと思っています。

 これから生産量の拡大とともに、スタッフを採用していかなければなりません。採用したスタッフが、のびのびと思う存分力を発揮し、さらに能力を伸ばせる職場の環境を整えていくことが、経営者として大切な仕事であり、一番難しいところです。

 私は、開店当時に予想もしなかったほどの幸せを今、実感しています。彼も自分の店を持つことで、夢の実現へ、そして幸せな人生へ向かってのスタートを切りました。これから、多くの苦労があると思いますが、一つ一つを味わいながら乗り越え、素晴らしい経営者に成長して欲しいと思います。そして、さらに大きな夢の実現に向かって進んで欲しいと願っています。
 
2010年6月 第233号より
芳野 栄
 
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