木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 
「徳(思いやりの心)を育てる」
 
  私の知り合いで、小学校の校長先生をしているMさんは、全校の児童に向けて毎週一回、五分間、校内放送を通じて徳(思いやりの心)の大切さを伝え続けていらっしゃいます。「なごやかタイム」と称して、思いやりの行動を児童の学校生活の中に見出して、話題としたり、新聞にあった記事などを参考にしたりして、思いやりの大切さを語りかけていらっしゃいます。

  昨年四月にスタートした「なごやかタイム」は、一年間で四十一回もの回を重ねられました。「なごやかタイム」を始められたきっかけは、「思いやりの心を児童に中に育てたい」、「校長の考えを職員にも伝えたい」、「毎週一回伝え続けることで自分自身を磨き、高めたい」という思いからだそうです。Mさんは、「なごやかタイム」の始まりに、児童に次のように語りかけていらっしゃるそうです。

  「みなさん、おはようございます。今日も元気ですか。今から『なごやかタイム』のはじまりです。みなさんが、この放送を聞いて「なごやかな心」になって欲しいと思います。「なごやかな心」とは、「にこにことして、心がまるく おだやかなこと」を言います。放送を聞いてこころをまるくしましょう。」

  実に、スタート時から児童にやさしく語りかけていらっしゃいます。聞いている児童の心の中に知らず、知らず思いやりの心が芽ばえ、育っていっていることでしょう。
  最近、このように 学校で人としての道や思いやりの心を伝え、育むということが少なくなっているように思われます。学力をつけ、知識を増やすことや、体力をつけること、つまり知育や体育が優先され、それらを正しく生かすための徳力を身につけること(徳育)が軽んじられているようです。徳力とは、思いやりの心で行動する力のことです。思いやりの対象は、人だけに限らず、社会や自然も含みます。社会秩序が乱れ、世の中が混乱しているのも、又、自然環境が破壊され、私達の生活にも影響がでてきているのも、社会や自然に対する思いやりの欠如がもたらしたものと言えるのではないでしょうか。

 こうしたことを憂え、将来を背負う子供達の人や社会や自然に対する思いやりの心を育てようとしていらっしゃるのですから、とても大切な教育をされているといえるでしょう。児童達に伝えていることが職員や保護者や地域の方々にも少しずつ伝わっているようです。自らの教職人生の総仕上げに今年、来年と続けることで、世の中が少しでも良くなるように、一隅を照らしていただきたいと思います。
 
2010年5月 第232号より
芳野 栄
 
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