木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 

四耐四不 したいしふ

 

 「 四耐四不 したいしふ 」。先月、木輪を卒業したスタッフに贈った言葉です

 池田繁美先生の書かれた「素心学講義」という本で、この言葉と出会いました。その本には、次のように書かれてありました。抜粋させていただきますと、

  中国清朝末期に活躍した、 曽国藩 そこくはん という人の言葉で、「 耐冷 たいれい 耐苦 たいく 耐煩 たいぼん 耐閑 たいかん 不激 ふげき 不噪 ふそう 不競 ふきょう 不随 ふずい 以成大事 もってだいじをなす 」−冷に耐え、苦に耐え、煩に耐え、閑に耐え、 げき せず、 さわ がず、 きそ わず、 したが わず、もって大事を成すべし。その意味するところは、まわりの冷たさ、直面する苦しさ、日々のわずらわしさ、暇をもて余す不安にも耐え、激情せず、ジタバタせず、つまらぬ競争はせず、信念を曲げてまで人に追従することをしないという覚悟がなければ大きな事を成し遂げられない。
ということでした。

 新入社員を採用し、スタッフも増え、経営していくことのむずかしさに直面し、「もうイヤだなあ」「わずらわしいなあ」「つらいなあ」と思っていた頃でした。上記の文章を目にした時、私の経営者としての未熟さと考えの甘さに気づきました。経営を続けていくには、まわりの冷たさに耐えることが必要なのだ。また、日々の苦しさにも、グッと耐えることが必要なのだ。同様に わずら わしさや暇からくる不安にも耐えぬくことが必要なのだと理解でき、世の中の経営者は、皆それらを受け入れ耐えているのだと思いました。私だけが、そうではないのだと思い、心が救われました。また励みにもなりました。そのように考えれるようになると、一人前の経営者となるために、それらを受け入れ、何とか乗り越えようと気持ちが前向きになりました。

 そんな時、もう一つ、池田先生に教えられた言葉がありました。「味わう」という言葉です。甘いも苦いも、まず口の中に入れて、しっかりその味を「味わう」ことでいい人生が送れるということだと解釈しています。これまで「イヤだなあ。つらいなあ」と思っていた「冷・苦・煩・閑」をまず受け入れて、そしてしっかり味わってみようと思いました。

 私の下した判断に周りのスタッフの冷やかな視線を感じることもありましたが、そうした冷たさをしっかり味わい、かみしめているうちに、この冷やかさの原因は、私がつくりだしているのではないかとふと思いました。スタッフに対する思いやりに欠けていることに気づきました。それ以降、さまざまな場面で発生する「冷・苦・煩・閑」に対して、正面から受け入れ、しっかり味わってみることで 一つ一つ、少しずつ解決していくように思えてきました。

 「耐える」というと、つらいイメージがしますが、まず受け入れ、しっかり「味わう」ことが必要だと解釈できれば前向きになれるように思います。

 そういう意味を込めて、卒業したスタッフに「 四耐四不 したいしふ 」の言葉を贈った次第です。
 
2010年4月 第231号より
芳野 栄
 
戻る