木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 

「難有り」は、「有難い」

 

 私達パン業界も、諸原材料の高騰や少子高齢化の影響もあり、なかなか順風満帆とはいきにくい環境になっております。しかし私は、こうしたことも木輪にとって「必要であり必然だ」と考えています。

 現在、社員に幸せを実感していただくということで、昨年に週休二日制を導入し、今年は一日実働八時間で残業ゼロという目標を掲げ努力中ですが、こうしたマイナスの環境変化のおかげで、二つの改善がほぼ出来上がったと言えるでしょう。まさに、「難有り」は「有難い」と言えます。他にも経営的にまだまだ未熟な部分があり、それらをじっくり考え改善を続けなさいという知らせだろうと解釈しています。

  パン屋の「本来あるべき姿」ということで考えてみると、多くの改善点が出てきました。例えば、徹底して焼き立て、揚げ立て、作り立てを追求する。徹底してお客様とのコミュニケーションをはかる。徹底して試食をすすめる。「笑顔であいさつ」を徹底させる等。足元にある誰でもできる地道なことを一つ一つ徹底していくことだとわかりました。そして、それら当たり前のことをどれだけ本気で、本腰入れて取り組むかがとても重要なことだとわかりました。

  さらに大切なのは、そうしたことをスタッフが自主的に自分のこととして考えられるよう、スタッフの人間力を高めておくことだと思います。それには、一人の社会人として身につけておくべきことを、日常生活の中でしっかり身につけられるよう指導していくことだと思います。

  木輪では、「思いやりの実践」ということで、社会人としての日常の心がけ(二十一項目)の実践にとり組み、毎月一項目ずつ意識して過ごし、その反省をレポートにして提出してもらっています。開始して一年八ヶ月になりますが、全員スタート時と比べると、とても魅力のある人間に成長してくれています。そういうスタッフ達が力を合わせ一日実働八時間、残業ゼロ≠ニいうテーマについても話し合いながら、なんとかクリヤーできるまでになりました。また、ポイントカードのサービスでも、カードがはじめて一杯になったお客様に販売員が手作りのお礼状を送っています。心の高まったスタッフは自ら考え自ら行動できるようです。完璧ではありませんが、以前に比べて随分と進歩しました。一人ひとりの持つ雰囲気も温かく感じられるようになりました。

  経営者は、スタッフの幸せを心から願い、働きやすく、幸せを実感してもらえる職場づくりや福利厚生面にももっともっと地道な努力を続けるべきだと思います。

  経営環境のきびしい今だからこそ、チャンス到来ととらえ、自社の内部の欠けているところを発見し、そこを正していく工夫、改善を実施すべき時ではないでしょうか。

 

(業界誌B&C’09 9月-10月 特集「不況を乗り切るための工夫」寄稿したものです。)

 
2009年12月 第227号より
芳野 栄
 
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