木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 

こころを耕す

 

雨降りの日、外を眺めていますと、雨水が固いコンクリートの上を流れ、排水口に流れ込んでいました。その時、固いコンクリートと人間の心のありかたが重なり、心を耕し、やわらかくしておくことの大切さを感じました。コンクリートのように表面が固いと、大切なものもしみこむことなしに流れ去っていきます。反対に、掘り起こされ空気を含んだ土や畑の土のようにやわらかいと全てを吸収することができます。

人の心についても、同じようなことが言えると思いました。自分中心の考え方しかできなかったり、過去の経験にとらわれすぎたり、かたよった考え方しかできなかったり、こだわりを捨てきれなかったりと心が固いと目の前にある大切なものに気づかず見過ごしてしまうでしょう。反対に、心が耕され、やわらかい心であると、多くの事に気づき、受け止めることができます。結果的に、受け止めたことを生かす力も発揮され、周囲の人に良い影響を及ぼしていくことができるでしょう。

心を耕し、やわらかくするということは、一つは、素直な心を身につけていくということだと思います。素直な心とは、人の言うことを否定せずに、それが常識的に考えて悪いことでない限り、まず「はい、わかりました」と受け入れること。また、身の周りに起ること、それが自分にとって良い事であっても、悪い事であっても、「ありがとうございます」と感謝して受け止めることです。二つ目に、思いやりの心を身につけていくことも心を耕すことになると思います。周囲の人に不快さを与えない、安心と喜びを与える心づかいを日常生活の中で実践していくことです。心の中に深くしみこむような良書を読むことによっても心は耕されていくと思います。

心が耕されてくると、何より魅力的な人間になってきます。表情や言葉づかいがやさしくなり、人の話にも丁寧に耳を傾けることができます。その上に、人の動作や表情の変化を見逃すことなく、困っている人や助けを求めている人に思いやりの行動がとれ、周りの人からも信頼されてきます。

心を耕し、魅力的な人間になることで幸せな人生が歩めると思います。

 
2009年7月 第222号より
芳野 栄
 
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