木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 

負ける練習

 

 会社を経営していると、うまくいかないことばかりです。次から次へと難問が押し寄せてきて、どう対処したらよいのか、わからなくなることがよくあります。そんな時、「今の状況の中で自分にできることを、ひとつひとつ丁寧に行動していこう」と、自ら勇気を奮いたたせて対応しております。

  最近の若者と接していますと、自分の思い通りにいかなかったり、失敗したり、難問にぶちあたってしまうと、しょげてしまったり、自信をなくしたり、必要以上に右往左往している姿を見ることがあります。これまで、うまく事がはこぶ経験がほとんどで、そうした壁に当たることなく人生を過ごしてきたからなのでしょうか。

 相田みつをさんの作品の中に、次のような詩があります。

      受け身・負ける練習

   柔道の基本は受け身
   受け身とは、投げ飛ばされる練習
   人前でころぶ練習
   人前で負ける練習
   人前で恥をさらす練習

 長い人生の中では、カッコよく勝つことよりも、ぶざまに負けたり、だらしなく恥をさらすことのほうが、はるかに多い。だから事前に、ころぶ練習や負ける練習や恥をさらす練習をしておくことが必要ですということでしょう。

 私の場合、小さい頃から、兄弟が多い家庭で育ち、自分の希望や思いがなかなか通らなかったりして、心を鍛える環境が自然に整っていました。そうしたことで、じっと耐えたり、うまくいかない事が当たり前の人生なんだと学ぶことができました。

 一方今は、少子化の中で兄弟が少なくなり、自分の望みがすぐに満たされる傾向が強くなってきました。ころんだり、人前で恥をかいたりすることが少なくなってきました。失敗する前に手を差しのべられ、逞しさに欠けた、ひ弱な、問題解決能力に欠けた大人に育ってきているように思います。

 子供の頃から何事にも、相応の責任を持って対処すること。子供がケンカに負けても、ころんでも、恥をかいても、親はじっと我慢してそのなりゆきを愛情を持ってしっかり見まもってあげることが大切ではないでしょうか。

 また、大人になっても、あるがままを受け入れ、正しく判断でき、正しく対処できる素直な心を身につけていくことが、負ける練習をくり返し、心を鍛えていくことにあたるのではないかと思っています。

 

2009年4月 第219号より
芳野 栄

 

 
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