木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 

親としての覚悟を持つ

 

 六月に発生した、東京、秋葉原での無差別殺傷事件をはじめ、毎日のように若者による凶悪事件が発生しています。一つの事件が解決される前に新たに事件が発生し、感覚的にマヒしてしまいそうです。

 加害者の動機は、いろいろあるようですが、心がいつも充たされず、イライラしていたり、不安を感じていたり、不満を感じていたりして、そのうっ積した、感情のはけぐちとして、人を傷つける行為に走っているように思われます。

 では、どうして、このように、イライラしていたり、不安や不満を感じることが多いのでしょうか。そこには、人間関係能力に乏しい、未熟な心が災いしているように思います。世の中に起こることや、人との関わり合いの中で発生する事などを受け入れることができないでいるのでしょう。素直な心の欠如と言えそうです。

一方、幼児期からの育った環境にも影響がありそうです。自分にとって、つらい事があると、、その事に、じっと「耐える」ということが苦手のようです。昔のように、兄弟ゲンカをしながら切磋琢磨しあい、思い通りにならにいことに我慢することも同時に体得していたものが、少子化の中、親が子供の過剰な欲(特に物欲)に応じていった結果、「耐える」「我慢する」ということが弱くなってきているように思います。

さらに、幼児期から、心が充たされないで、さびしい思いをしながら育つこともあるのではないでしょうか。親が、自分のことを優先させるあまり、充分に子供にかまってあげることができないと、子供は、いつも充たされない心の状態となり、心は乾ききってしまい、潤いをなくしてしまうでしょう。「自分の話をしっかり受け止めてくれている。」「一生懸命、耳を傾けてくれている。」そう思えるとき、子供は、自分の存在を認識し、同時に心も充たされるように思います。コミュニケーション能力を高める必要もありそうです。
もう一つ、小さい時から欠点ばかりを指摘され、そこを正すよう強く求め続けられることも、心の安定を失うことになるでしょう。両親にほめられたり、認めてもらった時には、どんなにうれしく思うことでしょう。心は潤い、充たされます。親の愛情をいっぱいに受けて育った子供は、健やかに、思いやりの心を持った優しい人間に成長すると思います。

親のつとめとして、子供を世の中の役に立つ社会人となるように育てあげるということがあるように思います。自分の欲を充たす前に、親としての義務と責任をしっかり果たすことが、現在求められているようです。

子供を一人前の大人に育てていくことは、親にとって大変大きな苦労を伴います。だからといって、そのことから逃げていたり、手を抜いていくと、現在の荒んだ世相は、ますます悪くなっていく一方です。せめて、自分の子供は、自分で正しく、しっかり育てていくという親としての覚悟が今、問われているように思えてなりません。

 

 
2008年8月 第211号より
芳野 栄
 
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