木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 

徳を育む

 

 六月のみずみずしい季節。木々の青々とした又みずみずしさを見るとその木々の根の細く繁っている姿を想像せずにはいられません。木々のみずみずしさは、その木々が栄えていること、いきいきと生命あふれていることを意味します。ふと、現在の世相を見てみますと、木々のようなみずみずしさとは反対に、殺伐とした潤いのないものを感じます。

五月の初めに、北九州市の小中学校の新採用された校長先生の研修の中で「リーダーとしての心構え」と題してお話させていただく機会がありました。
教育の現場のリーダーとしての誇りと使命感を持つこと、命がけで教育に取り組む覚悟(肚)を持つこと、そして、人間としての徳性を身につけ教育にあたること、又子供達や職員に対しては、自身修めた徳でもって徳育にあたり、正しく導く必要性等話させていただきました。

人格というものの基本は、人間としての徳性がベースにあると考えますが、現在では、生活の糧を得るための専門知識や一般知識が重要視されています。人間としての徳性はじめ、専門知識や一般知識全てが生きていく上で大切ですが、これまで人間としての徳性ということを置きざりにされてきた傾向があるようです。

徳性とは、木にたとえるなら目に見えない根の部分にあたるでしょう。これまで、私達は、根を繁らせることより、目につきやすい幹を太くし、枝葉を繁らせることに力を注ぎすぎてきたようです。その結果、根の大きさと幹や枝葉の大きさのバランスを失い、根からの充分な栄養や水分が木々のすみずみまで回らず、立ち枯れた木々になろうとしています。潤いのない木々になろうとしています。又環境変化に耐えれずに倒れた木々も多いようです。本来根さえしっかり繁っていさえすれば、どんな環境変化にも耐えうる木々であるはずです。

これから将来大きな樹に成長すべく子供達に対してこそこの根の部分をしっかり伝え育む必要があると思います。
教育は、教える者の人格の移しかえと言われます。それだけに、新採用校長には、それなりの人格者となっていただくことが、後から続く者の道を誤まらせないで済むものと確信いたします。
徳を修め、徳を育み、将来を見据えた上で、今やるべきことを足元から実践され一隅を照らす教育者になられます様心よりお祈りした次第です。

 
2008年6月 第209号より
芳野 栄
 
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