木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 

一流をめざす

 

 三月終わりから四月初めにかけてフランス、パリのパン屋を中心に視察にいってまいりました。
あちらのパン屋のオーナーの基本的な考え方を学ぶという目的がありました。地域一番店を目指すというパン屋の考え方や長時間労働に対する考え方に疑問がわいてきていました。

 パリでは、消費者が話題のお店を捜し訪ねて、遠くまで車で行って買うのではなく、自宅に一番近いパン屋さんで買い求めるということでした。日本と違いパンは、彼らにとって主食であるので、毎回、毎回、遠くまで行って買い求めるというのは、わずらわしいこともあるかと思いますが、その地域の街のパン屋さんを自分達の食をあずけるということで大事にしているのではないかと思いました。反対に街のパン屋さんもその地域の人々の食をあずかるという誇りを持っているように感じました。それゆえに、地域NO.1のパン屋を目指すより、その地域の人々のために、より安全で安心して、よりおいしく食べれるパン造りを目指しているようでした。その為にいろんな製法を考え、一流のパン屋になることを求められていると思いました。
これが本来あるべきパン屋の姿ではないかと思います。日本のパン屋さんのように、地域一番店を目指すとなると、他店の売上が気になり、いつも他店と比較していなければならず自分の特徴を生かした経営やパン造りがむずかしくなるようです。一流のパン屋とは、どれだけお客様のために力を出し、幸せや喜びを与えることに貢献できるかを 言うのではないでしょうか。

 もう一つ学んだことは、社員を大切にしているということです。フランスでは、一週間の労働時間が法律で定められ、それをきちっと守っているということです。仕事終了後の社員のプライベートタイムを大切にしています。そのあらわれは、以前より労働時間が短縮された分をどう製品づくりに反映していくかというところにあらわれています。
これまでの長いパン造りの歴史や伝統から試行錯誤の結果、得られた製法に変えることで労働時間の短縮をはかっています。
しかし、日本では、残念なことに、その製造方法を他店との差別化として取り入れているところが多いようです。ここに、考え方の違いがはっきりと現われています。一つの新しい製法をフランスでは、労働時間を短縮し、より多くのプライベートタイムを確保することに重きを置き、日本では、差別化の手段と考えられているのです。日本では、なかなか、労働時間の短縮化がはかられていないのが現状のようです。

今回の視察で、一流のパン屋をめざすことの正しさと、社員の労働時間を短縮することでパン業界の発展をはかる必要性を学びました。

 

2008年 5月 第208号より
芳野 栄

 
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