木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 

バランスを大切に

 栄養のバランスのとれた食事。バランスのとれた体。バランスのとれた経営。バランスのとれた人間等々バランスがうまくとれているということがとても大切なことのように思います。
私のような、たいした製パン技術もない素人のパン屋が十八年間も仕事が続けられているかと思えば、私よりはるかに優れた製パン技術を持った方の店が、何らかの理由で店を閉じられることがあるのは何故だろうと考えてみることがありました。おいしいパンを造ることについては、その方のほうがはるかに知識もあり経験もよく積んでいらっしゃいます。その時、ふと学んだ言葉が「バランスのとれた」という言葉です。

パン屋を経営する上で大切だと思われる要素は、@技術力 A販売力 B経営力の三つであろうと思われます。技術力とは、製パン技術そのものです。販売力とは、接客の仕方、陳列の仕方等お客様に安心と喜びを与えるための方法から、店の雰囲気や、その雰囲気をつくり出すスタッフ一人ひとりの人間性というものも含まれるでしょう。経営力とは、経営分析力、経営企画力、実行力、商品開発力等があると思います。パン屋を経営していく上でこの三つの要素の 「総合力」 ・・・ の高い方が良いと言えそうです。

仮に、パン屋Aは、技術力90点、販売力30点、経営力30点とします。総合点は、150点になります。一方パン屋Bは、それぞれがバランスがとれて各々が50点ずつとします。総合点では150点でパン屋Aと同じになります。しかし、店の 「総合力」 ・・・ という考え方があるとしたら 「総合力」 ・・・ は、各々の要素の「足し算」ではなく「掛け算」で表わせるのではないかと思いました。すると、パン屋Aは、90×30×30=81000となります。一方パン屋Bは、50×50×50=125000となり 「総合力」 ・・・ ではパン屋Bの方が大きくなります。つまり「総合点」が同じであるなら、バランスのとれた店の方が 「総合力」 ・・・ で優れることがわかります。

パン屋の経営に於いて大切なのは、各々の力をバランスよく高めていくことで、その 「総合力」 ・・・ は、各要素の積(掛け算)できいてくるわけですから、製パン技術力だけに片寄ったり、販売力だけに抜きんでていたり、経営力アップだけにとらわれてしまっては、 「総合力」 ・・・ としては、劣ってしまうということが理解できました。

バランスのとれた形とは、無理のないとらわれない安定した形であり、そのものの持つ本来の一番美しい姿を表すもののようです。店舗にしても人間としてもバランスをとり調和のとれたものにし、そのレベルを少しでも高めていく努力をする必要がありそうです。

 

2006年12月 第191号より

芳野 栄

 
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