木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 

おかげさま

 九月で木輪は、創業十八周年を迎えることができました。全くパンを造れない状態で独立開業し、数多くの方々の多くの「おかげさま」を得ることで、十八周年を迎えることができました。感謝申し上げます。

 話は、独立開業前に戻りますが、家内に対して「おかげさま」と感謝していることがあります。まず、一つ目は、私が「脱サラしたい」と話をしたとき、何のためらいもなく「いいですよ」と賛成してくれました。一定の収入のある安定したサラリーマン生活を捨て、独立の道を歩むのは、不安だらけだったことと思います。

 二つ目は、パン屋という職業を選ぶときです。朝早くから夜遅くまで仕事しなければならないことなどつゆ知らず、家内は、もともとパン好きなこともあってか、すぐにこれにも「いいですよ」と賛成してくれました。三つ目は、住み慣れた関西を離れ、私の実家のある九州での開業。これも簡単に「いいですよ」と賛成してくれました。九州で知り合いもいない所で初めての「商い」という仕事をするのです。私のパン製造能力のない事も知っています。
 よく快く賛成してくれたものだと思っています。現在あるのは、全部家内の「おかげ」であるのは、間違いありません。

 「おかげさま」の話をする時に、もう一人大切な方がいらっしゃいます。私が二年間修業を積んだパン屋の店主、細川浩さんです。この方は、私より三年前に、同じように脱サラし、どこにも修業に行かず独学し、パン屋を開業しました。私の修業は、一流のパン職人のもとではなかったのです。そこで学んだことは「人の真似をしたパンは造らない」「心を込めて一生懸命造る」「お客様に感謝をする」で、おいしいパンの造り方は、学べませんでした。

しかし、今振り返ってみると、細川さんという全くの素人に学んだおかげで現在の木輪があるのは、間違えありません。普通に考えると、「素人のパン屋さんで修業し、パンの造り方が学べなかったのでパン屋としてうまくいかなかった。」又「素人のパン屋で修業したが、私が自分なりに頑張ったのでここまでやってこれた」と考えがちになります。
 しかし、私は敢えて「細川さんという素人のパン屋さんに学んだおかげで現在のようになることができた」と思うのです。

 要は、与えられたことを全て受け入れることで本来は、ハンディキャップと思われる事でも、それがメリットととして働くことにもなるようです。一流のプロの職人さんの元で修業をしていたら、決して現在のような木輪にはなれなかったでしょう。

 これからも、数多くの一見ハンディキャップと思われることや、辛い事もあるでしょうが、すべてを受け入れることでそれらをプラスに転じていくことで、力が湧いてくるように思います。

 そのような人生をこれからも歩みたいと思います。創業記念日に当たり二人の「おかげさま」に感謝いたします。

 

2006年10月 第189号より

芳野 栄

 
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