木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 

長所を生かす 

 先日、近くの中学校の職場体験授業をお引き受けし、三名の中学生が半日、木輪で職場体験されました。

 事前に三名の方に課題として、「自分の長所を10個挙げ、きちっとした紙に書いてくること。」をお願いしておきました。
当日、ひと通り体験実習が終わったあと、働くことの意義やこれからの進路を決めるにあたってのアドバイスをさせていただきました。

  働くことの意義については、自分のために働くことと世のため人のために働く必要があることを説明させていただきました。

 次に、一人ひとり自分の長所を発表していただきました。それぞれにすばらしい長所が次々と出てまいりました。三人が三様それぞれ異なった長所を持っていることを説明させていただきました。そして「もし、三人が全く同じ長所を持っていたり、日本の全国民や全世界の人々が全く同じ長所であったらどうなるのでしょう。」と問うたところ、三人の中学生は答えに窮していました。

 私は、もしそうであったら、世の中がうまく機能せず、そのような世の中は存在できないだろうと思います。幸にして、人それぞれに異なった長所を持っているがゆえに、ある人は医者に、ある人は美容師に、ある人は先生に、ある人はパン屋にとうまくバランスがとれ、そのバランスの上に、この世の中が成り立っているのでしょう。

 一人ひとりの命がこの世に生を受ける時に、誰一人として同じ長所でなく異なった長所を持って生まれてきたのだろうと思います。ある人は、医者になれるような長所を持って、ある人は、美容師になれるような長所を持って又、先生やパン屋になれるようなそれぞれの長所を持って生まれてきたのだろうと思います。とすれば、自分の長所を自分だけの為にだけ使って良いことにはならないでしょう。自分を含め、世のため人のために自分の持つ長所を生かして生きていくことがおのずと求められていると思われます。また、縁あって就いた仕事が自分の持つ長所を生かす場かもしれません。

 しかし、私達には、そうなのかどうかわかりません。大切なのは、わからないといって、手をこまねいているのではなく、縁あって就いた仕事をとことん好きになることだと思います。「天職」という言葉があります。私の考えでは、天から授かった職業とは、天から自分に与えられた長所を最大限に生かし、縁あって就いた仕事に対して、とことん努力し情熱を注ぎ込み、結果としてこれが、天から授った職業だと自覚することだと思います。

  三名の中学生の方に自分の持つ長所の自覚と、その長所を生かせる進路の選択をすすめました。

 そして、その長所で世の人々を幸せにしていただきたいと結びました。


 

2006年3月 第182号より

芳野 栄

 
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