「もったいない」 |
「フードプロセッサーが動かないので修理していただけませんか。」と電気屋さんに持ち込んだところ、「修理に一週間程度かかります。。修理代金のことを考えれば、新しく買った方が安くて得ですよ。」と言われました。また最近、湯沸器が故障しました。ガス屋さんに修理を依頼すると、先程の電気屋さんと同じ返事。「修理には一週間程かかります。修理代金を払うなら新品を買った方が安くて得ですよ。」すぐに修理しないと仕事に支障をきたしてしまう。だからと言って新品を買うのも「もったいない。」
今年の二月、ケニアのノーベル平和賞受賞者、ワンガリ・マータイさんが来日され、日本で出合った「もったいない」という言葉に感動され、「この言葉を世界に発していきたいと思います。」と述べられたと報ぜられ、「もったいない」を大切にしようという声を聞くようになりました。
私が子供の頃、親からよく、「そんなもったいないことをしたらダメです。物を粗末にすると神様のバチが当たるよ」と言われ、物を大切に扱う事、物を大事にすること、その物の寿命がつきるまで使い切ることの大切さを教えられました。物がない故に、大切に大事に使わなければなりませんでした。
日本が高度成長していく中で、「消費こそ美徳」という風潮が広がりました。物が巷にあふれ、お金を出しさえすれば安く、いろいろな物が簡単に手に入る時代です。「もったいない」という言葉は、「ケチ」という事の代名詞のように扱われ、若い人達に先の修理の事を尋ねても、「修理代金よりも安くて、すぐに手に入るなら新しいものを手に入れる方が明らかに得です」と答えが返ってくるようです。
「使い捨て」の時代の到来と共に、「もったいない」という言葉がほとんど影をひそめてきました。それと同時に、地球環境が破壊されてきました。私達の心も荒んできました。損得勘定がしみつきはじめました。始末倹約する心を失いました。
私たちが「損得勘定」をいう判断基準から少しでも離れ、「正しいか否か」を判断基準に取り入れることにより、「もったいない」という言葉が再び多くの方々の口から発せられるようになると思います。そうすることで、もっと素敵な世の中に、もっと素敵な地球になるような気がします。
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2005年8月 第175号より 芳野 栄 |