木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 

深めると広がる

 今年の年頭に当たり「もっと幅広い人生を歩みたい。線の太い生き方をしたい。」と思いました。これまでの人生を振り返ってみると、「幅の狭い、線の細い生き方」しかできていなかったように思いました。だからと言って手を抜いた人生であったわけでもなく、心を省いていた訳でもなく、自分としては、精いっぱい努力をして来たし、頑張ってもきました。しかし、何故かそこに満足のいかない、満たされない物足りなさを感じていたのです。では、どうしたら、幅広い人生が歩め、線の太い生き方ができるのか、思い悩んでいたある日、潟Cエローハット相談役の鍵山秀三郎様の日めくりカレンダーが目に飛び込んで来ました。そこには

深めると広がる

と書かれていました。見た瞬間、さがし求めていた答はこれだと直感し、心からうれしくなりました。そういう観点でこれまでの人生を振り返って見ますと、一つ一つの事にチャレンジし、いろいろと間口を広げ経験して来たものの一つ一つを深く掘り下げて探求するということは、やってこなかったことに気づきました。前へ前へ「積極的に前向きに」をモットーに広げてきたものの後になって振り返ってみると底の浅いものしか残ってない事に気づきました。

 読書にしても、交友関係にしても仕事上に於いてもそうでした。読書を例にあげますと、ここ五・六年、私は寸暇を惜しんで数多くの本を読んできました。読みながら、「なるほど、なるほど」とうなずき「ああそうか」と納得しながら一つ一つの本を読んできました。しかしそこには、熟読というか精読という域には達していなかったように思います。気に入った部分に線を引き、自分の体験と照らし合わせたり、自分の意見と比べたり、新たに自分の考えとして、受け入れたり、自分のとるべき行動にまで高めたりすることなしに、ただ「読んだ」という領域から出ていない事に気づきました。

 「深める」ことが大切とわかった時には、天にも昇るとてもうれしい気持ちになりました。「深めることが大切なんだ」「一つ一つ深めることで人生は変るな」「深めるといいんだな」と何度も何度も自分の心に言いきかせ納得しました。あらゆることを深めていくことが人間の幅を広げることであり、深めていく行為が線の太い生き方をすることなんだと思いました。行動を起し実行していくことしか深めることはできません。また、し続ける以外に深めることはできません。知識でなく、知恵に至らなければ深まったことになりません。

 「深める」とは、手抜き、心抜きせず、誠心誠意一つ一つを丁寧に丁寧に扱い努力し続けることなのでしょうか。

 読書に於いても、交友関係に於いても、仕事の面に於いてもあらゆる事に於いて「深める」ことをモットーに、これからの人生取り組んでいきたいと思います。

 
 
 
 
 

2004年4月 第159号より

芳野 栄

 
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