木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 
巣立つ子供達

  二人兄妹の子供達。今年三月で妹の方が大学を卒業し、これで昨年一足早く社会人となった兄共々親から巣立っていきます。これで親としてのつとめの半分が終了したと思っています。あと半分は、二人の子供がそれぞれの伴侶となる相手にめぐり逢った時、心から喜んであげて一緒になることを認めてあげることでしょう。

 二人が大学を卒業するに至るまでには、子育てについて、私達夫婦にもいろいろな苦労がありましたが、そうした苦労も今となっては楽しい思い出となっております。それよりも、私の脱サラからパン屋の独立開業、そして軌道にのるまでの十五年間、一番親の愛を必要としていた時に、子供達につらい思いをさせたり、さびしい思いをさせただろうと思うと申し訳ない気持ちで一杯です。日曜日と言えば、パン屋めぐりと、日頃の睡眠不足解消のため横になることの多かった私の修業時代。独立開業後も忙しさのあまり日曜日も休日もなかったために充分かまってやることができませんでした。反対に子供達は朝六時半から七時半すぎまで毎日、店の前の掃除と焼き上がった商品を店に並べる手伝いをしての登校と、子供達も役に立つ働き手としての小学校、中学校時代でした。文句一つ言わず、よく手伝ってくれました。

 小学生時代にパンの嗅いがすると友人に言われつらい思いをしたと聞いたり、朝食は自分達で食べて、自分達で片付け、自分達で水筒の準備をして・・・と全て自分達でやってきましたが、ある日「僕も皆のようにおかあさんにしてもらいたい」という話を聞いた時には、心から「済まない」という気持ちで一杯でした。

 そのような環境の中でも二人とも病気や怪我もせず親に心配かけず育ってくれた子供達に今は感謝の気持ちでいっぱいです。大学は親元を離れて過ごしましたが、親の心配をよそに、人間として成長してくれたと心からうれしくなりました。「積極的に、前向きに」人生を送る大切さや、人に対する「思いやり」の大切さ等を学んでくれたようです。これまで二十数年間、教育らしい教育をしてあげれませんでしたが、親の育て方が正しかったか否かが、今後二人の生活を通して明らかになるでしょう。子供達がいろいろな問題を前にして、どう対処していくか、どのような形で社会とかかわり合いを持ちながら、世の中のために役に立つ人間に成長していくのか、たのしみでもあり不安でもあります。

 娘から最近届いた手紙の中に「働く」という事に関して「社会人として、又人生の先輩として成功した人は皆、仕事を充実したものにできている人が多いように思います。就職活動している時に思っていた”人の笑顔のため”に働きたいという信念を忘れることなく働きたいと思います」とありました。自らが信じる道を勇気を持って進んで欲しいと思います。

はばたけ子供達!
ありがとう子供達!

 
 
 
 
 

2004年3月 第158号より

芳野 栄

 
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