木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 

初心を忘れない

  「初心忘るべからず」能の創始者世阿弥の言葉だったと記憶しております。

 私にとっての「初心」は、私の名刺の裏に書いているとうり「おいしいパンを造りたい」です。脱サラし、二年間修業を積んだものの開店間近になっても、おいしいパンどころか、パンそのものができませんでした。だからこそ、おいしいパンを求める気持ちは強く、「おいしいパンを造りたい」ただそれだけの日々であり、自分の人生をかけてやっていこうと決心し、おいしいパンを求め、工夫、改善、努力を惜しまない日々の連続でした。ある方の本によりますと「初心とは、どんな小さな事にも、まごころを込められるということ。また小さな事を大事にすること」とありました。手を省かない、心を省かない、謙虚さを失わない、そうした心で仕事に立ち返っていくことが、初心を忘れないということになりそうです。

 創業以来十五年を振り返ってみますと、「おいしいパンをつくりたい」という思いからどんな小さな事にも心を込め、また小さな事をことさら大切にしてきたように思います。幸にして、昨年の十一月三十日に現在の地に新店舗をオープンすることができました。店も大きくなり、ご来店のお客様の数も増え、スタッフも少しづつ育ってきました。私にとって本当にありがたいことです。私の初心が十五年間貫かれ続いてきたからではないかと思います。

 しかし、私達は、どうしても日々の仕事に追われ、日々の反省を怠り、初心を忘れ謙虚さを失っていきがちになります。スタッフが次第に増えていく中で、十五年前の私の初心をスタッフ一人一人が良く理解し、それを日々の仕事の中で実践していくことが大切になってきます。

 これからは、私はじめ、スタッフ全員が謙虚さを失わず私の初心を再度よく理解した上にスタッフ一人一人の初心も加え「お客様から愛される店」「お客様から必要とされる店」になるよう心新たに「初心忘るべからず」をモットーに新たな店づくりをしていきたいと思います。

 
 
 
 
 

2003年12月 第155号より

芳野 栄

 
戻る