木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき

実りの秋に感謝

 「季節を忘れないいのちの不思議」あるお客様からいただいた葉書絵の中の言葉です。その年その年で多少の違い、ズレはあるものの自然界のいのちあるものは、季節という自然の移り変わりを敏感に感じながらいのちをつないでいるようです。
 
 先日、ある研修会に参加し田圃の周囲を歩いたり、稲刈りの体験をしたりと、自然との触れ合いの中で自然の持つ力の大きさに感動し、その自然の恵を受けて、いろいろな作物が実っている姿を見て感動しました。

 稲穂が金色に染まった田圃。一つ一つの稲穂に実がたわわに実り、頭を垂れています。田圃全体を見渡しても感動したのですが、稲穂を刈り取る時に、命いっぱい生きてきた1本1本の稲穂を前に改めて感動と感謝の気持ちが湧いてきました。

 6月に田植えをしたあと、太陽の恵を一身に受け、成長を続けます。しっかりと地面に根をおろし、スクッと直立し、雨や風や日照りにじっと耐えながら実りの日を待ちます。やがて涼しくなり、実もいっぱいにふくらんだころ、頭を垂れて充分に成長しきったことを知らせてくれます。そうした稲穂を収穫できることは、農家の方たちにとってこの上もない幸せと満足と感謝の気持ちで一杯でしょう。刈り取った稲穂をひもで束ねて竹ざおに掛けて天日乾燥。また太陽の恵みを受けます。刈り取られたあとの田圃に1本・2本と落ちている稲穂をきっちり拾いあげます。”落穂ひろい”です。

 1本の稲穂も1粒の実も無駄にできません。この実りを得るまでに、多くの労力を費やし、大きな自然の恵をいっぱいに受けているのですから。1本1本の稲穂がとてもいとおしく思えました。

 子供の頃、両親からごはん1粒までもきれいに食べるよう躾られましたが、今回の稲刈りの体験をしてみて、それが当り前の事だとよく理解できました。あの広い田圃の中から1本の稲穂を大切に拾う事を思えば、小さな茶碗の中の1粒のごはんを残さずいただくのは、たやすい事です。

 物を大切にする。いのちをいただく事に感謝する。作った人々に感謝する。自然の恵みに感謝する。そうした心を持てる人がもっと増えてくると、もっと潤いのある、安らかな社会になるように思います。

 実りの秋に心から感謝したいと思います。

 
 
 
 
 

2003年11月 第154号より

芳野 栄

 
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