木々のささやき まごころを贈る パンの木輪 北九州市 八幡西区

 
 
木々のささやき
 

「つばめ」が選んでくれた木輪U

 1つの命が誕生し成長する過程は人間に限らず他の生き物についてもたのもしく、またすばらしいものがあります。先月号でつばめの巣ができ親つばめが巣でじっと、卵を暖めていることを紹介しました。

 その卵がふ化し かわいいヒナ達が巣から顔を出しはじめたのが6月11日。何羽のつばめがふ化したのか、定かではありませんでしたが、生まれてまもない羽毛もまだないヒナの1羽が巣から転落して、息絶えていました。それ以外のヒナ達は親が運ぶエサをわれ先に黄色い口ばしをのばし、口に入れてもらおうと必死で鳴きます。しかし、親鳥はヒナ達を平等に扱っていました。順番をきちんと決めてヒナ達の口にエサを順番に与えています。見ていてとてもほほえましく子を思う親の気持ちは人間と何ら変わらないのだなと思いました。そんなある日今度は少し大きく成長したヒナがまた1羽巣から落ちていました。今度は自ら羽根のようなものをバタバタさせながら落ちたのか、動かないものの、元気にあたりをキョロキョロ見まわしていました。これまでにない別世界に、とても驚いた様子。しかし、このままではいずれ命絶えると思うと私の心に「どうにかしてあげなくては」とあせりが出はじめました。結局4、5メートル高さにある巣までスタッフの協力を得て戻してあげました。落ちたヒナのかわいらしさと言ったら、たとえようもない程でした。巣の中には4羽のヒナが成長していました。

  生まれて、2週間程でヒナ達は羽根を整えはじめました。親鳥がエサを運んでくるとはげしく羽根をはばたかせながら、巣の淵に立ってエサを受けとります。巣立ちの日が近いように思われます。ヒナ達が成長するにつれて親鳥のエサ取りは忙しくなり何度も何度もエサを取っては巣に戻って来ます。巣に止まってエサを渡すのではなく、巣の近くまで来ると空中にとどまって、そこで口うつしでエサを渡しています。子育てに懸命の姿は親としてのつとめと喜びを感じているようです。私も思わず「頑張れ!!」と応援してしまいました。

 このように、あと数日で文字通り巣立っていくヒナ達ですが、その後は、どうなるのだろうと思いをめぐらせます。これまで産み育ててくれた親鳥に「ありがとう」の一言を仕ぐさにあらわすのだろうか親鳥を大切にするのだろうか・・・・。いやそんな事はないでしょう。おそらく人間だけでしょう。産み育てていただいた親に感謝したり大切にするのは。

  今回、一連のつばめの行動を観察しながら気づいた事は「人間も、つばめも、子を産み育てる過程で子に対する愛情は変わらない」ということです。つばめも成長過程で子供にその成長を促す仕ぐさをあちこちで見かけました。

  つばめが巣立ったあと今の巣はどうなるかわかりませんが、またご縁があれば是非とも木輪の巣に戻って来て欲しいと思います。この2ヶ月間、つばめを見るたびに自分が、やさしい気持ちになれたことを感じます。ありがとう つばめたち。元気に成長して下さい。

 
 
 
 
 

2003年07月 第150号より

芳野 栄

 
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