標題は、相田みつをさんの「道」という詩の一節です。
5月のはじめの連休を利用して長い間果たせなかった西宮市にある以前修業していたパン屋の店主細川さんへの挨拶に伺いました。これまで "木々のささやき"にて何度となく、ご紹介させていただいた方で、私にパン屋としてのものの考え方を熱心に教えてくださいました。15年目にしてようやく念願の新店舗の実現を果たしたこともあり感謝の意をお伝えしたくて、今回の訪問となりました。
ところが、訪れてびっくりしたことに、細川さんは、パン屋を2年前にやめられて現在は、小さな画廊を営んでいらっしゃいました。まっ白になった長髪をバンダナでくくり、パン屋のおもかげは少しもありません。奥様と画廊兼作業場に座って、私よりひと足先に来ていた私の同僚と昔をなつかしむように話されていました。思いがけない変わった姿を目の当たりにして、一瞬、ぼう然と立たずみながらも、その現実を認めざるを得ませんでした。
話を伺ってみますと、3年前に腸にポリープができ手術をしたことや、奥様が体力に限界をきたし、これ以上手助けできなくなったこと、さらに後継者がいなかったことにより、自分にまだ余力のあるうちにパン屋をやめ、自分の趣味と特技を活かした道に進まれたそうです。
私は、これまでいつも細川さんのような、特徴ある個性的なパン屋を目指していただけに、目標とするパン屋さんの消失に大きなショックととまどいを感じました。私より10歳年上の細川さんと、自分の10年後を重ね合わせたとき、標題の相田みつをさんの詩の一節が頭をよぎりました。
「いちずに一本道、いちずに一ッ事」私は、これからの人生をパン屋の経営者として、木輪の経営のみならず、将来のパン業界を担う人材を育成することや、木輪で育って独立したスタッフの後押しをすることなどパンとのかかわりを今後も続けたい思いました。
細川さんとの話も終わり、画廊をあとにしながら「これが『自立』ということか」と思いました。
これからは、自分の二本の足でしっかり大地をつかみ、立って、ゆるぎない経営とスタッフ全員の幸せを求め、同時に地域社会への貢献を心新たに誓いました。